
課題と解決とその効果
課題
- 新型コロナウイルス感染症の流行により職員の感染が相次ぎ、離職率が大幅に上昇
- 不利な立地条件とコロナウイルスの影響で新たな人材の採用が困難な状況が続く
- 効果的な採用方法やノウハウが不足しており、人材不足の悪循環が加速
解決策
- 採用実績が前年比比較で300%超の増加を達成
- 職員へのアンケートやインタビューを通して、病院の持つ魅力や求める人材像を再発見し、積極的に発信
- SNSの活用や職員紹介制度を強化し、院内広報を充実させ、応募導線を整備
その後の効果
- 採用活動の充実により採用面接の依頼件数が大幅に増加し、採用活動のスピードが向上
- 福利厚生の充実や採用管理の仕組みを改善し、働きやすい環境を整備
- 人員の増加により職場環境の改善が見込まれ、職員がより安心して働ける環境が整い、職員の定着率が向上
マイナビ医療経営で専門家を活用する組織には、一体どのような変化が起きるのでしょうか。ここでは、実際に経営課題の改善に向けて取り組んだ法人の皆さんに、実感できたメリットについて詳しく伺います。
今回登場していただくのは、熱海所記念病院の西島志枝さん(看護部長)と鈴木翔さん(総務課課長) 、そして専門家として参画した工藤(マイナビ医療経営) です。
-
西島 志枝さん
-
当院は、静岡県と神奈川県の境に位置しています。静岡県側から来院するには山を越える必要があり、神奈川県側からも決してアクセスが良好とは言えません。この立地面での不利な条件により、看護師の採用は極めて困難な状況でした。当グループは神奈川県と埼玉県の2カ所で看護専門学校を運営しています。そのため、毎年新卒生が入職はするものの、数年後には地元に戻る方も多く、定着が難しい状況でした。
このような背景で人材不足が続く中、追い打ちをかけたのが新型コロナウイルス感染症の流行です。職員にも複数の感染者が出て、稼働できる人材がさらに減少。残った者で懸命に対応を続けましたが、次第に疲弊していき、離職率が大幅に上昇する事態となりました。病床数を制限せざるを得ない時期もあったほどです。人手不足がさらなる人材流出を招くという悪循環が加速し、「当院独自の採用活動には限界がある」と判断しました。

-
鈴木 翔さん -
付き合いがあった紹介会社からの連絡も、コロナ禍を境にぱったりと途絶えてしまいました。新たな人材の採用が思うように進まず、悩む日々が続いていた中で、マイナビの営業の方から「マイナビ医療経営」のサービスを紹介してもらったのです。「これはいい!」と直感し、現状をなんとか打開したいという思いですぐに上長へ提案しました。
新規施策の展開と既存施策のリニューアルに並走した1年間
-
鈴木 翔さん
-
本サービスの契約期間である1年間で、私たちはさまざまな施策を実施し、より積極的な採用活動へと舵を切りました。特に印象に残っているのは、紹介会社への営業です。これまでは、当院から採用の依頼を出した後は、紹介会社からの連絡を「待つ」スタンスでした。しかし、工藤さん(マイナビ医療経営)から「病院の魅力や求める人材像を積極的に発信することが大切」というアドバイスを受け、自ら紹介会社を訪問するように。また、これまで活用してこなかったスカウト型の人材サービスも取り入れ、採用活動の間口を広げることにしたのです。
新たな採用活動のツールとして、公式LINEも開設しました。当院の公式アカウントに登録すると、職員インタビューや福利厚生情報が掲載されたページへのアクセス、また病院見学の申し込みなどが簡単に行えるようになっています。加えて、職員が家族や知人の看護師を紹介する「職員紹介制度」によって採用につながったケースも。これまでは同制度の院内認知度は低く、ほとんど利用されていなかったのです。しかし、マイナビ担当者の提案により、本制度を紹介する説明カードを全職員に配布したことで、認知度が一気に高まりました。

-
西島 志枝さん -
求職者や紹介会社に当院のことをより深く知ってもらうため、PRブックを作成したことも大きかったですね。従来、看護部の紹介は当院のウェブサイトに掲載していましたが、今回は内容とデザインを一新してPRブックに掲載。そのための準備として、当院の良い点だけでなく課題についても把握するために職員へのアンケートを実施し、さらに工藤さん(マイナビ医療経営)による看護師へのヒアリングも行ってもらいました。管理職が気付いていなかった現場のリアルな声や改善点、そして当院のアピールポイントや求める人材像についてもあらためて考えるきっかけとなり、非常に有意義な取り組みだったと感じています。
また、職員へのインタビューコーナーもリニューアル。これまでは新人看護師からのメッセージを中心に紹介していましたが、近年では転居などをきっかけに中途採用での就職活動をする方も増えてきています。そうした状況を踏まえ、中途入職者が当院を選んだ理由や応募のきっかけなども盛り込むようにしました。新卒・中途を問わず、さまざまな背景のある求職者が参考になるコンテンツに生まれ変わったと思います。実際、充実した内容に仕上がったPRブックを目にして、見学に訪れた看護師も多くいらっしゃいました。
-
工藤(マイナビ医療経営)
-
PRブックに掲載する情報は、求職者や紹介会社が最初に目にするものなので、徹底的に見直して最新情報にアップデートしました。また、同院や熱海という土地の魅力がより伝わるように写真を追加した他、平均的な休日取得数や職員の満足度といった数値化できるデータも公開。事前に職員へのアンケートやヒアリングを行ったことで、「この情報は絶対に掲載したい!」という判断がしやすかったです。こうした積極的な求人活動の結果、理学療法士など看護師以外の医療職からの応募も増え、採用の幅が広がりました。
「連日の問い合わせ」「増員による安心感」に成果を実感
-
鈴木 翔さん
-
採用活動をここまで充実させることができ、本当に満足しています。時期によっては、ほぼ毎日のように紹介会社からメールや電話が来るほどで、採用面接の依頼件数も前年度と比べて見違えるほど増加しました。外部との窓口を担当している私は、他の業務が追い付かなくなるほど忙しく、まさにうれしい悲鳴を上げている状態です。採用活動は、とにかくスピードが命。返信が遅れてタイミングを逃さないよう、常に細心の注意を払っています。手が回らない時にはマイナビ担当者がきめ細やかなサポートをしてくれたので、本当に心強かったですね。例えば、「まだ返信されていないメールがありますよ」とさりげなく気付かせてくれたり、「○○の件は対応しておきました」とスマートにフォローしてくれたり……。気配りと丁寧な対応に感動しきりでした。
-
西島 志枝さん
-
私も、大・大・大満足です。今回の取り組みによって、職員のモチベーションや病院の雰囲気が大きく変わりました。人員が増える見込みが立つと「そのタイミングまで頑張ろう」と前向きな気持ちを持つことができます。また、定期的に新しい人が入ってくる環境だと、たとえ退職者が出ても「また新しい人が入ってくる」とおもうことができ、安心して働けるようになったのです。どの職員も「患者さんにより良い看護を提供したい」と考えているので、人手不足によって思うように看護ができない時は、もどかしい気持ちだったことでしょう。自分たちらしい看護を提供できる土壌が整ってきたことは、管理職としてこの上ない喜びです。
正直なところ、個人的には、当初サービス導入に乗り気ではありませんでした。以前勤めていた病院にもコンサルタントが入っていましたが、成果が思うように出ず、良い印象を抱いていなかったのです。しかし、マイナビ担当者と話を重ねるうちに、そのイメージがガラッと変わりました。データ収集・集計・分析の精度が高く、その見せ方も的確。採用に関する知識やスキルが豊富なのはもちろんのこと、チームワークも抜群で、まるで当院の一員のように親身になって物事を考えてくれたのです。私たちのことを常に気遣ってくれたので、不快な思いやストレスを抱くことなく、終始気持ちの良いやり取りができました。

採用のノウハウを活かして、確実な採用と定着を目指す
-
鈴木 翔さん
-
今後も、身に付けたノウハウをしっかりと生かしていきたいです。特に感動したのは、採用管理の仕組みです。採用の依頼が来た際にはすぐに面接日を調整しますが、これまではそのやり取りを記録していませんでした。現在はスプレッドシートに記入し、看護部長とリアルタイムで情報共有できるようにしています。「面接の前にアイスブレイクを取り入れると良い」というアドバイスも、引き続き実践していきたいと思っています。
また、職員の声を丁寧に拾い、さまざまなかたちで反映していきたいです。今回の取り組みによって、福利厚生の充実もはかることができました。例えば、年間休日数を120日以上(4週8休制+祝日)に設定し、プライベートの時間を確保。また、車通勤者から徴収していた駐車場代を病院負担に変更、近隣のホテル内にある温泉施設での職員割引導入など、働きやすい環境づくりを進めています。今後も、職員が意見を伝えやすくなるように、気軽に交流できる機会などを増やしていきたいです。
-
西島 志枝さん
-
紹介会社と連携する重要性を実感しました。求める人材像を丁寧に伝えることで、紹介会社の方から「こういった方はいかがでしょうか?」といった提案が数多く届きました。積極的にコミュニケーションを取れば熱意が伝わり、状況が好転することもあるのですね。
採用面接の心得や効果的な質問についても貴重なアドバイスを頂きました。面接時の一般的な注意点はグループ内で共有されていましたが、「どのような質問をすべきか」といった具体的なアドバイスを受けたのは初めてで、大変参考になりました。
また、中途採用者が長く活躍できるように支援していくことも、私たちにとって重要な使命です。入職後すぐに独り立ちしたい人もいれば、プリセプターのようなサポーターを必要とする人もいます。そこで、入職直後に本人の意向を確認し、どの部署に配属されても適切なサポートが受けられる体制を整えました。
さらに昨年度からは、職員同士のコミュニケーション活性化にも一層力を入れています。その取り組みの一環として、他部署と合同で行うグループワーク型の研修や、コミュニケーションアプリ「つなぐ」の活用をスタートしました。普段あまり接点がない職員同士でも、ちょっとしたきっかけがあれば忙しさをねぎらい合う気持ちが芽生え、職場のつながりが強化されるかもしれません。また、このアプリには、院内の良い取り組みや職員の素晴らしい行動を褒め合える機能があるので、さらに前向きなコミュニケーションが増えるのではないかと期待しています。特に4月に入職予定の方々については、入職前から交流を深められる場を設け、スムーズな受け入れや離職防止につなげるための企画を検討中です。
今回のサービス導入を通じて、採用活動が大きくパワーアップしたことは、私たちにとって非常に貴重な経験となりました。今後もこの取り組みで得た学びを生かし、より多くの仲間を迎えられるよう努力していきます。そして、当院で働くすべての職員が安心して長く働き続けられるよう、職場環境の整備にも一層力を尽くしていきたいと思います。

【医療法人社団伊豆七海会 熱海所記念病院(静岡県熱海市)】
一都四県に医療・看護・介護の関連事業所を約120カ所展開する「戸田中央メディカルケアグループ」の一員として、1984年に開院。一般急性期、地域包括、回復期リハビリテーションを兼ね備えた144床のケアミックス型病院。熱海・伊東医療圏で唯一の一次脳卒中センターの認定施設であり、救急医療や手術に加え、ガンマナイフ治療も実施している。他県からの転院患者も多い。高齢化率が50%を超える熱海市で、地域の「かかりつけ病院」として貢献している。
法人情報
data

- 法人名
- 医療法人社団伊豆七海会 熱海所記念病院
- 業種
- 医療
- 規模
- ~ 144床