このような課題を解決したい方へ
- チームビルディングにより、組織として成長し続けたい
- 職員満足度を高め、快適に働ける環境を提供したい
- 連鎖離職を未然に防ぎ、強固なチームを構築したい
強い組織をつくるチームビルディングとは
組織開発の目的は、単に知識を習得することではなく、組織の現状(成熟度)に合わせた変革を促すことにあります。例えば、チームが立ち上がったばかりの「形成期」では相互理解を深めることを優先し、摩擦が生じる「混乱期」では対立を恐れず本音で対話できる土壌を作ることが目的となります。各フェーズの課題を特定し、組織が自律的に動ける状態へと導くことが、組織開発における重要な視点です。
揺るがないチームを生み出す組織開発 ――組織育成・開発
マイナビ医療・介護経営の専門家 : 一般社団法人医療接遇ホスピタリティ協会 原田 大資 氏
「職員の数は充足しているのにうまく機能していない」「職員の人間関係がギスギスしていて改善をはかりたいが、どのように介入すればいいのかわからない」など、経営者は「人」をめぐるさまざまな壁に直面しています。個々の能力はもちろんチームワークが問われる医療・介護現場において、チーム作りは重要なテーマです。安全な医療・介護を提供するためにも、職員の定着のためにも、組織育成に注力し揺るがないチーム作りが求められます。心理学に基づいたアプローチと、オリジナルのゲームを活用した研修で組織開発を促進させる原田大資氏にお話を伺いました。

組織の成熟度・課題に合わせて最適化する研修の目的
組織開発の目的は、単に知識を習得することではなく、組織の現状(成熟度)に合わせた変革を促すことにあります。例えば、チームが立ち上がったばかりの「形成期」では相互理解を深めることを優先し、摩擦が生じる「混乱期」では対立を恐れず本音で対話できる土壌を作ることが目的となります。各フェーズの課題を特定し、組織が自律的に動ける状態へと導くことが、組織開発における重要な視点です。
強い組織をつくるチームビルディングとは
インターネットやSNSの普及により、医療機関・介護施設経営は口コミの影響を受けるようになり、利用者は「最寄りの皮膚科」ではなくより評判の良い「隣の駅の皮膚科」を選ぶ時代になりました。その口コミを作っているのは、医師や看護師、事務員の一つ一つの対応です。それにより近年、人の頭数ではなく信頼関係に基づいたチームビルディングによって、業績を2倍、3倍と増やす可能性があることが経営者に認識されつつあります。
チームビルディングは、組織の目的・目標を達成することができる「よいチーム」を作り上げるプロセスです。新規の患者さんを増やしたい、医療機関という組織として成長し続けたいと考えるのであれば、職員同士が良好な関係性を築き、強いチームを形成することが欠かせません。
チームビルディングは、関係構築によってお互いの距離を縮める「形成期」を経た後、異なる意見の人たちが自分の意見をぶつけ合って議論する「混乱期」を迎えます。ここをうまく乗り越えられるとパフォーマンスが高い状態に向かいます。しかし、今までの良好な関係性から一転し、本音が出てきたタイミングで生じる対立にどのように対応していけばよいのか、経営者として解決策を求められることがあります。
昨今の採用市場は“定着”がより強いニーズになっており、特に中途採用で活性化しています。
チームビルディングによって強い組織を形成できれば、職員満足度が高まり、より快適に働ける環境を提供することができます。そのことは今後の採用の可能性や定着率の上昇にもつながることから、力を入れて取り組むべき重要なポイントです。
【目的・階層別】具体的プログラムと習得可能なスキル
組織フェーズに合わせた最適なカリキュラム例
組織開発研修では、画一的なパッケージではなく、医療・介護現場の現状に即した内容を検討することが重要です。新入職員向けには「帰属意識の醸成」、中堅層には「フォロワーシップとリーダー意識の芽生え」、管理者層には「心理的安全性の作り方」など、階層と組織のフェーズを掛け合わせたカリキュラムを設計することで、現場での実践につなげやすくなります。
研修を通じて現場で発揮しやすくなる主なスキル
- 傾聴・対話力:相手の言葉の裏にある意図を汲み取り、建設的な議論を行う力
- 問題発見・解決力:現場の摩擦を「成長の種」と捉え、当事者として改善に動く力
- 心理的安全性の醸成:誰もが安心して本音を言いやすい空気をつくり、早期相談や改善につなげる力
- リーダーシップとフォロワーシップ:役割に応じた主体的行動と他者への支援能力
- 組織への共感とコミットメント:法人や施設の理念を自分事として捉え、貢献する姿勢
リーダーを目指したくなる組織作りのビフォーアフター

チームビルディングのテーマの1つに「誰がリーダーでも成功するメンバー作り」があります。あるクリニックでは「リーダーを目指す職員が少なくて困っている」という相談がありました。背景には、新入職員や若手が今のリーダーが優秀で自分とかけ離れていると感じ、「あの人にしかできない」と思っている現状がありました。それによって、リーダーを目指す気持ちが起こりにくくなっていたのです。
このままでは次のリーダーは生まれないことから、「リーダーシップ人狼」というオリジナルのゲームを通して研修を行い、それぞれが持つリーダーシップを引き出していきました。
リーダーシップ人狼では、7人のチームに赤が2枚・黒が5枚入った7枚のトランプを配ります。赤陣営対黒陣営で戦い、誰が赤か分からない状態の議論をして、最もリーダーシップを発揮した人に投票します。夜がやってきてトランプが配られたら、全員目をつぶって赤の2人だけ目を開けてもらいます。そうすると誰がチームメンバーなのかが分かるので、協力し合いゲームを進行することができます。赤の人は一人しかサポートの人がいませんが、8割方赤チームが勝ちます。その理由は、普段発揮していないリーダーシップを当たり前のように発揮するからです。
その結果、「誰がやってもうまくいくチーム」が完成し、みんなでフォローし合い、チームを成功に導くための行動を取れるようになったことで、「私もリーダーをやってみたい」という環境が生まれました。
このような環境下で職員を育成すると、将来リーダーになることを視野に入れて日々の業務に携わるようになります。いつもの業務をリーダーの視点で考えたり、リーダーが困っている時に積極的にサポートしたりという日々の行動が、リーダーになるための準備に繋がります。
このクリニックの事例では、チームビルディングのプロセスの初期からの介入が必要でした。この時期、メンバーはお互いをよく知らない状態で仕事をしています。そこから信頼関係を構築するために必要な「仲良くなる」「お互いの距離を縮める」という変化は、3時間ほどの研修で実現しました。そこから「本音が言える」「リーダーシップを発揮する」というプロセスを目指すと2回の研修を、さらに「問題解決の力を高める」「経営的視点を持つ」というプロセスを目指した場合は3~4回の研修を実施しました。学んだことを実践する期間として、研修後は1ヵ月間のインターバルを設けていることも特徴です。
チーム作りはある程度の段階までは当事者で可能ですが、対立するような状況から信頼関係や人間関係を構築する場合、理事長や院長がファシリテーターになってしまうと効果を得られないことから、第三者の介入が必要です。
ゲーム体験が心理的安全性を生み出し、関係性を変える論理的背景
「リーダーシップ人狼」などのゲームを活用する理由の一つは、遊びの要素によって「失敗しても大丈夫」と感じやすい雰囲気をつくりやすいことにあります。日常の業務や役職といった枠組みを一度外し、フラットな状態で共通の目標に挑むプロセスを通じて、自然と本音の対話が生まれます。このようなゲームの中での成功体験は、現場に戻ってからもお互いにフォローし合える関係性づくりの土台になります。
カギは「発揮割合」の強化
組織は個人が持つ能力の向上によってパフォーマンスが向上します。しかし、実際の場面では保有能力をどのくらい発揮できるかという「発揮割合」が重要で、例えば1時間に折り鶴を10羽折れる保有能力を持ちながら、周りが5羽しか折っていないから自身も5羽しか折らない、という発揮割合になってしまうことがしばしば起こります。この発揮割合を高めることがチームビルディングです。自分のためなら5羽しか折らないけれど、みんなのためだったら10羽折れる、と頑張るようになるわけです。そのような、自身が持つ力を最大限発揮したくなるような関係性、組織に対する理解や共感を獲得していくことがチームビルディングにつながっていきます。
アメリカのギャラップ社が実施した「あなたはどれくらい熱意を持って働いているか」という調査で、「熱意を持って働いている従業員の割合」の世界平均は23%でしたが、日本は5%という結果でした。20人中19人は余力を残した状態で働いている、この19人の熱意を引き出すことができれば、業績の向上を目指せます。経営者の世界では「今いるメンバーで業績3倍」とよく言いますが、実は組織は余力を持っていることが明らかになっているので、チームビルディングに成功すれば実現可能ですし、少なくとも本気で目指すことができます。
【参照】ギャラップ『2023年版 ギャラップ職場の従業員 意識調査:日本の職場の現状』
レジリエンスの高さが強いチームにつながる

日本は新しい産業の勃興により、労働力が奪われ、既存の産業で働く人たちがミニマムのチーム構成で働くことで、何とか経営を維持している組織が多くあります。そのような中で、メンタル不調や介護を理由に退職者が発生すると、待っているのは連鎖離職です。ある医療機関では、人事3人・総務3人で人事総務の業務をしていましたが、人事所属の一人がメンタル不調で退職しました。仕事の負荷が増えたと感じた残り2人も退職を希望し、人事を担う職員がゼロになるという危機に直面しました。次の採用も見通しが立たないことから、退職する3人分の人事の仕事を総務の3人に再分配した時、このチームに待ち受ける未来は容易に想像できます。
誰かが退職を考える事態になって初めて慌てるのではなく、さまざまな事情を抱えていても働き続けられる、レジリエンス(困難をしなやかに回復し、乗り越える力)の高いチームを作っておくことが離職予防策になると考えられています。
ピンチに強い組織作りと働き続けられる人事設計
例えば、介護と仕事を両立している人がいる場合、リモートワークや時差出勤を認め、相談に乗れる仕組みを構築することがまず必要です。さらに、制度の構築だけでなく、介護を理由に週5日から週3日の勤務になる人がいれば「お互い様だから気兼ねなく休んで」「大切な仲間の大切な人生だからサポートしよう」と言えるような職員同士の関係性を築いておくことも重要です。ピンチに強い組織作りをしていくことが、介護離職を考える人にとっても、組織にとってもwin-winであることから、この取り組みに関心を持つ医療機関・介護施設が増えることを目指しています。
2025年4月から育児・介護休業法が改正され、介護離職を防ぐための研修実施や相談窓口の設置など、雇用環境整備に関する措置が事業主に義務付けられます。こうした社会の流れも踏まえ、対応が必要です。
地域の医療機関・介護施設の組織改善に関わる活動を通じて、従業員一人一人の幸せを考え続けることが重要です。地域の有名な病院が素晴らしいチームワークを育み運営していくことで、社会にもたらす価値も高まると考えられます。
【参照】厚生労働省『育児・介護休業法 改正ポイントのご案内』
研修を「やりっぱなし」にしない振り返りと現場定着の手法
組織の変化を本物にするためには、研修後の「実践」が欠かせません。研修で決めた行動目標を現場で試す期間を設け、その期間中にどのような壁にぶつかり、どのような変化があったかを次回のセッションで振り返ることで、学んだことを知識のままにせず、日常の習慣へと落とし込みやすくなります。
日本にリーダーを増やし社会を変える
今後は、ピンチに強い組織作りをする企業を増やすための活動に注力し、リーダーを目指す人や独立する人、自己実現する人が少ない現状を変えたいという考えがあります。チーム作りは仲間作り・自己実現・社会貢献・自分の市場価値を上げる行動なので、さまざまな角度から実践していくことが重要です。
また、心理学を学んだ経験から、絵本を通して子どもたちの自信を育む活動を行いたいという考えも示されています。絵本は親が読み聞かせすることから、子どもだけでなく親の教訓にもなることが期待されています。自信が育つ→挑戦したいものが増える→努力する→成長する→不安になる→勇気をもって前進する→成功・成長→自信になる、のサイクルを作りたいという意図が述べられています。
図書館だけでなく、歯科医院や小児科のキッズルームにも絵本を並べることを目標に、取り組みを進めていきたいとしています。
組織育成・開発 専門家

一般社団法人医療接遇ホスピタリティ協会
原田 大資 氏